J. K. Rowling の性差別 (J. K. Rowling's Sexism)
ジェイ・ケイ・ローリング (J. K. Rowling, 1965-) と言えば、『ハリー・ポッター』シリーズで、大人気を博した英国の作家である。彼女は 2020 年に、トランスジェンダー政策に対して、慎重に進めるように提言して、多くの非難を受けている。
彼女の意見をまとめてみれば、次のようになる。①トランス女性は女性ではない、トランス男性は男性ではない ②ジェンダー認定証明書の取得を簡易化してはならない ③反対派から深刻な人権侵害を受けている ④女性専用エリアで女性や少女の権利が侵害されてしまう ⑤トランスの人々に嫌悪感情は持っていない ⑥ ジェンダー移行が「激増」していて、子どもたちが危険にさらされている (https://front-row.jp/_ct/17615479 からの引用)。
ローリングの主張に対しては、反論する人が多く、彼女は世界中から脅迫されているようだ。
そのような苦境に立つローリングを、2024 年 6 月 24 日発行の The Spectator で、ジェイムズ・カーカップ (James Kirkup) は "J.K. Rowling’s glorious refusal to be kind" (思いやりのあるということに対してジェイ・ケイ・ローリングの名誉ある拒絶) という論説の中で擁護している。
ローリングは『ハリー・ポッター』の映画に出演した俳優たちや政治家を非難している。世界的に著名な作家であるから、彼女の非難は大きなインパクトを与えるものとなる。その間の事情を、ジェイムズ・カーカップは次のように述べる。
She refuses to forgive those she believes have done wrong, including some actors in Harry Potter films. And now she’s excoriated Keir Starmer for his failure, once again, to defend the gender-critical Labour MP Rosie Duffield who has – like Rowling – faced credible threats of violence over her views.
(訳) 彼女は、ハリー・ポッターの映画に出演している俳優など、自分が間違ったことをしたと信じている人々を許すことを拒否している。 そして今、彼女は、キール・スターマーが、ローリングのように、彼女の見解をめぐって暴力の脅威に直面しているジェンダーに批判的な労働党のロージー・ダフィールドを擁護できなかったことで、再び激しく非難している。 (excoriate 激しく非難する)
映画に出演している人物とは、ダニエル・ラドクリフ (Daniel Radcliffe) 、エマ・ワトソン (Emma Watson) 、ルパート・グリント (Rupert Grint) のことで、彼らは映画『ハリー・ポッター』に出演している役者であるが、ローリングの反トランスジェンダーの発言には反対している。国会議員のロージー・ダフィールド (Rosie Duffield) も反トランスジェンダーの立場を表明して、多くの非難を浴びている人物であるが、キール・スターマー (Keir Starmer) は労働党の党首でありながら、彼女を擁護しなかったことで、ローリングは非難をしている。因みに、キール・スターマーは、2024 年 7 月 5 日に英国首相に就任している。
ジェイムズ・カーカップは、「親切にすることが重要」という社会上の束縛が女性に存在していると論じているが、ローリングは勇敢にも、その社会的通念に真っ向から対立していると、彼女を称賛する。そして「親切にすること」より重要なことは、真実を述べることだと結論づける。
As a man, I’m not subject to that cultural norm of niceness, but I still thought long and hard about writing this column, because it risks casting me as someone who defends nastiness and praises anger. But in the end, some things are more important than being nice. Telling the truth is one of them.
(訳) 一人の男性として、私は親切さという文化的な規範に左右されるわけではないが、それでもこのコラムを書くことについて、長く懸命に考えた、なぜなら、それは私を意地悪さを擁護し、怒りを称賛する人物として私が解釈される危険性があるからだ。しかし、結局のところ、親切であることよりも、重要なことがある。真実を語ることも、その一つである。
そして自分の立場を明確に説明する。
I am merely observing that the way that Rowling speaks – unrepentantly, unflinchingly – is just as important as what she says. One of the most prominent women in the world today isn’t being sweet or nice or gentle. She offers no pink, no sequins, no unicorns and no flowers. J.K. Rowling is not being kind. Long may it continue.
(訳) 私はただ、ローリングの話し方、つまり悔い改めることなく、ひるむことなく、彼女が何を言うかと同じくらい重要であることを観察しているだけである。今日、世界で最も著名な女性の一人は、優しくも優しくもしていない。彼女はピンクも飾りも、ユニコーンも、花も提供していない。ジェイ・ケイ・ローリングは優しくはない。それが長く続きますように。 (unicorn ヨーロッパで力と純潔の象徴とされる架空の動物)
ジェイムズ・カーカップは、もちろんローリングの考え方に賛成しているのではなく、世間の風潮である「女性は親切であれ」に敢然と反対し、自分の意見を公表しているローリングの態度を、称賛しているのである。
