イーヴリン・ウォーとグレアム・グリーン (Evelyn Waugh and Graham Greene)
40 年間続いた作家同士の友情が、2024 年の 6 月 17 日の The Critic に "The odd couple" という題名で描いてあった。筆者は ジェフリー・マイヤーズ (Jeffrey Meyers) であるが、この方は、エドガー・アラン・ポー (Edgar Allan Poe, 1809-1849) やアーネスト・ヘミングウェイ (Ernest Hemingway, 1899-1961) の伝記を書いている。
この評論で扱われている作家は、イーヴリン・ウォー (Evelyn Waugh, 1903-1966) とグレアム・グリーン (Graham Greene, 1904-1991) である。 イーヴリン・ウォーは辛辣な風刺とブラックユーモアが得意であった。代表作に『衰亡記』 (Decline and Fall, 1928) 、『ブライズヘッド再訪』 (Brideshead Revisited, 1945) 、『名誉の剣』 (Sword of Honour, 三部作) などがある。
他方のグレアム・グリーンは、『事件の核心』 (The Heart of the Matter, 1948) 、『情事の終り』 (The End of the Affair, 1951) で世界的な名声を得た。また映画化された『第三の男』 (The Third Man, 1949) は、懐かしいと感じる人がは多いのではないだろうか。
このブログの作成者は、英文科の大学院生の時に、イギリスから来られた外国人教師に『ブライズヘッド再訪』を講義されたことを、遠い記憶ながら覚えている。グレアム・グリーンは大学院時代の同級生が、論文に取り上げていたので、『事件の核心』を英文で読もうとしたが、途中で挫折した。
ジェフリー・マイヤーズは、イーヴリン・ウォーとグレアム・グリーンが多くの共通点を持ちながらも、はっきりと分かる相違点を、次のように挙げている。
There were other differences, too. Waugh was social, humorous, snobbish, arrogant and difficult to like; Greene was solitary, gloomy, kind, generous and likeable. Waugh lived in the country, courted aristocrats and loved luxury; Greene preferred cities, low life and opium dens. Waugh craved self-indulgent comfort; Greene thrived on self-punishing hardship.
(訳) 他にも違いがあった。ウォーは社交的で、ユーモラスで、紳士気取りが強く、傲慢で、好感の持てない人間であった。グリーンは孤独で、陰気で、親切で、寛大で、人好きのする人であった。ウォーは田舎に住み、貴族の機嫌を伺い、贅沢を好んでいた。グリーンは都市、裏社会の人、アヘンの巣窟を好んだ。ウォーは自己満足の快適さを切望していたし、グリーンは、自己罰的な苦難を乗り越えて成長した。 (thrive on は「悪い条件なのにかえって頑張る」という意味である)
グリーンの伝記を書いたノーマン・シェリー (1925–2016) は、二人の類似点と相違点を簡潔に示している。
Yet, as Greene’s biographer Norman Sherry concluded, Waugh “must be accounted Greene’s best male friend … equal in fame, equal in intellect, unequal in nature and personality”.
(訳) しかし、グリーンの伝記作家ノーマン・シェリーが結論づけたように、ウォーは「グリーンの最高の男友達と見なされなければならない...名声において等しく、知性において等しいが、性質や人格はまったく似ていない」と述べている。 (Norman Sherry はイギリスの小説家、伝記作家、教育家)
お互いの作品が気に入らない時は、沈黙を守っていた。これが彼らの友情が長く続いた秘訣かもしれない。
The two men maintained a professional as well as a personal friendship. They often reviewed each other’s work, and their favorable opinions were especially valuable when other critics were harsh. Both made a point of remaining silent (with one exception) if they could not praise.
(訳) 2人の男性は、個人的な友情だけでなく、小説家同士としての友情も維持した。彼らはしばしばお互いの作品を論評し、他の批評家が厳しいときには、彼らの好意的な意見が特に貴重であった。どちらも、褒められない場合は (1つの例外を除いて) 沈黙を守ることを心がけた。 (make a point of doing 主張する、重視する)
性格に根本的な差異がありながら、彼ら二人は死ぬまで友情を保ち続けていた。それは感動的なことである。
Yet, in touching letters Waugh expressed his love for Greene: “I wish we met more often. I am deeply fond of you.” He treasured Greene’s comradeship but knew it was precarious: “Our friendship started rather late. Pray God it lasts.” Despite Waugh’s large family, Greene “realised what a lonely man he had been”. Greene could live with his doubts and the concept of hell, but said, “there’s no doubt that Waugh was a very troubled man. Troubled by guilt and immensely frightened by death.”
(訳) それでも、ウォーは感動的な手紙でグリーンへの愛を表現した。「もっと頻繁に会えればいいのに。私はあなたを深く愛している」彼はグリーンとの友情を大切にしていたが、それが不安定であることを知っていた。「私たちの友情はかなり遅れて始まった。長く続くように!」ウォーが大家族に囲まれているにもかかわらず、グリーンは「彼がどれほど孤独な男であったかに気づいていた」。グリーンは、自分の疑念や地獄という概念を受け入れることができたが、「ウォーは非常に問題を抱えた男だったことは間違いない。罪悪感に悩まされ、死にとても怯えている」
ブログの作成者は、このような友情には羨望を覚える。自分勝手な妄想で、多くの人に迷惑をかけた自分のこれまでの人生を深く後悔している。
