薩摩の酒豪たち (Hard Drinkers in Stsuma)

勇壮な薩摩の侍踊り (文化庁)

勇壮な薩摩の侍踊り (文化庁)

 大学の修士課程を修了して、鹿児島県の大学に奉職しているとき、鹿児島の酒豪と酒を飲む機会がよくあった。私はからきしの下戸で、ビール一杯で顔が真っ赤になり、酒豪たちにあきれられたものだ。酒が飲めないのは、人生の半分を捨てたようなものだと、常々思っている。酒を飲んで世間のしがらみを抜け出し、本音でぶつかりあうことは、なんと爽快なことであろう。ただ、最近では、酒気帯び運転の取り締まりが厳しくなり、意志の弱い私は、酒が飲めていれば、必ず酒気帯び運転で捕まって、悪くすれば刑務所に入っていたかもしれない。ひょとすると、神が私を下戸に作ってくださったのかもしれない。

 薩摩の酒豪たちには、酒を飲むときに一種の風格を感じた。薩摩で酒と言えば焼酎のことで、酒のような甘みがあるアルコールは、彼らには合わないであろう。因みに、鹿児島の飲み屋で酒を注文すると必ず焼酎が出てくる。忘年会などの酒席では、会話はあまりなかった。ただ出席者全員が、ニコニコして焼酎を飲むだけである。ただし飲み方が豪快である。他の県民が飲むように、ちびりちびりとは酒は飲まない。お猪口を飲み込むように一気に飲む。パコ、パコという擬音語が、彼らの飲みっぷりを見ていると、私の頭にいつも浮かんできた。そして飲んだ後ニコニコする。その瞬間に人生の喜ぶが凝縮しているようだ。下戸の私が最高にうらやましいと思う瞬間である。

 鹿児島では 5 年半ほど、お世話になったが、その間の 1 年間はイギリスに留学させてもらったので、結局は 4 年半の滞在であった。鹿児島と言えば、今でも思いだすのは、抜けるような青空と薩摩の酒豪たちの飲みっぷりである。鹿児島に行かれた方は、場末の飲み屋に立ち寄って、そのような酒仙のような酒豪を探すことも一興である。