世界の若者の状況 (The Situation of the Young in the World)
2016年に実施された静岡県立大学の英語入試問題には、2003 年に報告された Gerison Lansdown の論文 "Youth Participation in Decision Making" (政策決定における若者の参加) が取り上げられている。2003年の世界の若者の苦しい状況が描かれているが、2021 年の 9 月でも、そのような状況が改善しているとは思えない。
まず筆者は若者が直面している問題は、"illiteracy, poverty, HIV/AIDS, substance abuse, discrimination and forced engagement in armed conflict" と指摘している。"substance abuse" が分かりにくい言葉であるが、試験問題では注として「薬物乱用」と説明している。ただこれが分からなくとも、受験生は日本語 400 字以内の要約には困ることはないであろう。
筆者の若者の見方は肯定的なもので、次のように書いている。
They are social actors with skills and capabilities to bring about constructive resolutions to their own problems.
(訳) 彼らは、自分自身の問題に建設的な解決法をもたらす技術と能力を持った、社会で活躍する人々である。
そこで国連にある「子どもの権利委員会」は、政策決定に若者を参加させる意義を説くが、各国政府の反応は遅い (... but progress remains extremely slow) 。
Lansdown は教育システムに学生の意見を取り入れたほうが、学生の教育にはよい効果があると論じている。
Evidence shows that schools in which democratic environments are introduced are likely to have a more harmonious atmosphere, better staff-student relationships and a more effective learning environment.
(訳) 民主的な環境を導入した学校は、より睦まじい環境になり、より良好な教員と学生の関係を持ち、より効果的な学習環境になることは、証拠から明らかである。
受験生はこのあたりの文章を用いて、400 字以内の日本語の解答を作ればよいと思うが、私がこの英文に興味を持ったのは、最後の二文に使用されている、be + to の構文である。周知のように、be + to は「予定・命令・義務・運命・可能・目的」 (竹林滋『新英和大辞典』第六版 ー 研究社、2002年) など様々な意味があるので、解釈する時には注意が必要である。問題文の最後から二番目の英文を見てみよう。
If the devastating student dropout rates in so many countries in the world are to be reduced, educational administrators and policy makers need to learn from children and young people how learning institutions can become places where they want to be.
英文中の "are to be reduced" は、目的の意味を持つので、上記の英文を訳してみると、「世界中の多くの国にある衝撃的な学生の中退者の割合を減少させようと思うならば、教育管理者や政策立案者は、学習施設をどのようにして、子供たちや若者たちの希望する場所にするかということを、彼らから学ぶ必要がある」となる。
多くの中退者がいることは、教育制度や教育環境が劣悪だということを示す。大人は学校や大学について、もっと若者の意見を聞く必要があることは、間違いないことであろう。
