Anne Perry について (Anne Perry)
2020年実施の慶應義塾大学 (文学部) の英語入試問題にある paracosm という珍しい単語について先日紹介したが、また興味ある人名を見つけたので報告しておきたい。
それは歴史小説家として現在活躍している Anne Perry のことである。彼女もブロンテ姉妹と同じように paracosm を所有していた人間である。先日も紹介したように、paracosm とは "a prolonged fantasy world invented by children; can have a definite geography and language and history" (https://ja.powerthesaurus.org/paracosm/definitions) というもので、訳してみると「子供によって創られた長期にわたる空想世界、明確な地理、言語、歴史を有することもある」となる。
Anne Perry はこの paracosm を友人の Pauline Parker と共有して、二人は離れられない友人となっていた。ところが、Pauline Parker の母親は、二人があまりにも親密になりすぎて同性愛になることを怖れ、二人を引き離そうとした。当時、同性愛は恐ろしい罪と考えられていたからだ。因みに、二人の家庭環境について言えば、Pauline Parker はニュージーランド生まれで、労働者階級出身であった。一方、Anne Perry はロンドン生まれで、父はカンタベリー大学の学長であった。
当時 Anne Perry は Juliet Hulme という名前であったが、二人は Pauline Parker の母親を 1954年 の 6月22日 にストッキングで包んだレンガで殴り殺してしまった。その時、Pauline Parker は 16 歳、Juliet Hulme は 15 歳であった。
二人は 5 年間の服役の後、釈放され二人ともイギリスに渡った。Pauline Parker はイギリスのケント州で暮らし、成人するとローマ・カトリック教を信仰するようになる。Anne Perry もイギリスに行き、後年モルモン教を信じるようになる。刑務所から釈放されるとき、二人は会ってはいけないと裁判官から言われたとあるが、当時の司法長官である Sam Barnett は、そのような条件はなかったと、ジャーナリスト達に語っている。
Anne Perry は 5 年間の服役後、ブロンテ姉妹と同じように小説家として成功した。私は寡聞にして、彼女の作品を読んだことがないが、いつか目を通してみたいと思う。殺人を犯した少女が、後年どのような小説を書くか非常に興味があるからである。
私見を述べれば、小説を書くことは、"paracosm" を構築することと同じではないだろうか。小説の世界も "paracosm" と同じように、” a definite geography and language and history" を持っているからである。普通の人々は、幼年期が終わると "paracosm" から卒業するが、小説家はそれをじっくり心で温めて小説世界を構築していくのであろう。