野球とクリケット (Baseball and Cricket)

2025 年の Major League Baseball では多くの日本人が活躍している 大谷翔平や山本由伸は Dodgers に所属してチームに貢献している
2017 年に実施された東京外国語大学 (Tokyo University of Foreign Studies) の英語入試問題に、野球とクリケットに関する面白い表現が出ている。周知のように、東京外国語大学では、世界中の言語が研究・教育されており、多くの語学専門家が所属している、日本唯一の国立の外国語大学である。問題に使われた英文は、イギリスの言語学者 David Crystal のものである。David Crystal については、彼のホームページ (http://www.davidcrystal.com/GBR/David-Crystal) を参考にするとよいでしょう。
アメリカ出身のセミナー発表者の話を David Crystal が聞いていた時、聴衆の一人が質問をした。アメリカのセミナー発表者は、その質問に答える前に、'Hmm, that was from out of left field" とつぶやいた。イギリス人の David Crystal には、その表現が分からなかった。隣で聞いていた人も分からなかったようで、David Crystal に聞いてきた。その騒ぎを発表者が気付いて説明をする。
"that was from out of left field" は野球に関するイディオムで、その意味は問題文の中で明らかにされている。
Apparently, the left part of the outer field is furthest from the first base, so that if the ball is hit in that direction the fielder has the longest distance to throw it back. The expression thus means 'unexpected' or 'out of the ordinary'.
(訳) 明らかに、外野の左側は一塁ベースから最も遠い。そこでボールがその方向に飛んでくると野手は一塁ベースに投げるには最も長い距離を投げることになる。かくしてその表現は「不意の」とか「思いもかけない」という意味になる。
アメリカ人の発表者が "that was from out of left field" の意味を説明してくれたので、David Crystal は礼を言って、イギリスではお馴染みのクリケット用語である "a straight bat" (正直な行為) を使う。アメリカ人発表者は、その意味が通じない。
この場面は、言葉の背景には文化があり、その文化が共有されていない場合は、コミュニケーションができないことを示している。すなわち、"culturally loaded expressions" (文化を詰め込まれた表現) は、文化が異なれば理解できないのである。
この問題にはもう一つ面白い表現がある。それは "His face was a picture" である。これは「大変驚いた顔をした」という意味であるが、"that was from out of left field" の意味がイギリス人の聴衆に理解されなかったから、アメリカ人の発表者の顔が驚きの表情をした。また彼は David Crystal から "a straight bat" というクリケット用語を聞いた時も、驚いた顔になる。
私も驚いた顔をせざるを得ない。それはインターネットで野球由来の英語表現を説明しているサイトで、"that was from out of left field" に関して David Crystal とは異なった説明をしているからである。そこでは次のように説明されている。
この表現は、野球の外野手がホームベースから飛んでくるボールの方向を予想し守備をしていたのに、その予想に反して、外野席から突然ボールが飛んできて驚くことから由来した表現です。物事が思わね所から発生したり、予期せぬ出来事が突然起きたり、または誰かが思わぬ発言をする時に使われる表現です。
どちらが正しいか、私には判断できないが、野球に詳しいサイトの運営者の説明の方が納得できるように思う。