新型コロナと人間関係 (New Corona and Human Relationship)

 2021 年実施の慶應義塾大学英語入試問題 (医学部) には、新型コロナの英文論説を試験問題としている。この文献は 2020 年に書かれたものであろう。現在、新型コロナの感染状況は落ち着いているが、pandemic を前にした人間の苦悩は、今も変わりはないように思える。流行している最中に、COVID-19 を入試問題に取り上げるとは、さすがに医学部の入試問題と言える。

 まず英文論説には、人との直接的なコンタクトがないことで起こる人間の精神的危機は、大人も子供も同じであると書かれている。

It seems adults deprived of consistent and varied peer contact can get just as clumsy at social interactions as inexperienced kids.

(訳) 終始変わらなくて様々な同僚との接触がない大人は、経験不足の子どもたちと同じように、社会的交流にはぎこちなくなるように思える。

 孤独な生活を送っていた人は、通常の生活に戻ったときには、不安を感じることがある。この部分の英文が、入試試験では英文和訳の問題となっている。People ~ report ~ という主語と動詞の構造が分かれば、和訳は簡単にできるであろう。

People separated from society—by circumstance or by choice―report feeling more socially anxious, impulsive, awkward, and intolerant when they return to normal life.

(訳) 状況によって、あるいは自分の選択で、社会から切り離された人々は、通常の生活に戻ったときには、社会的には不安で衝動的で不寛容になると、報告している。

 孤独な生活がもたらす悪影響を、なるべく減少させる行動を起こす必要がある。そうしないと、その悪影響は、しっかりと人間生活に根を下ろすことになる。

It's an odd social malaise that can easily become firmly established if we don't recognize why it's occurring and take steps to minimize its effects.

(訳) それは奇妙な社会の病気であるが、なぜそれが起こるか理解して、その影響を最小限にする対策を講じないと、簡単に強固に根付いてしまう。

 たとえ夫婦や家族と一緒に過ごしていても、人は孤独を感じる。その状況は、バランスの取れた食事をしていないようなものである。

Even if you are spending the pandemic with a romantic partner or family members, you can still feel lonely—often camouflaged as sadness, irritability, anger and lethargy—because you're not getting the full range of human interactions that you need, almost like not eating a balanced diet.

(訳) たとえ愛情深いパートナーや家族と一緒に疫病の時期を送っていても、それでも人は孤独を感じる。しばしば孤独は、悲しみやイライラや怒りや倦怠で偽装されるが、その理由は必要とするすべての人的交流を得ていないからであり、そのような状態は、バランスの取れた食事をしていないことと、ほとんど同じである。

 次の英文は和訳の問題となっているが、外の世界で見知らない人との簡単な挨拶で、人は広い共同体の一員と感じて、安心感を得ることができる。それが新型コロナの流行でなくなっている。

"This daily interacting with individuals out in the world gives you a sense of belonging and security that comes from feeling you are part of, or have access to, a wider community and network," said Stefan Hofmann, a professor of psychology at Boston University.

(訳) 「外の世界で人と触れ合う日常の交際が、より広い共同体やネットワークの一員であり、いつでもそれに近づくことできるという所属感と安心感を与える」と、ボストン大学の心理学者であるステファン・ホフマンは言った。

 それではパンデミック禍の人々は、どうすればよいのであろうか?囚人の孤独の影響を研究している Craig Haney は、次のような提案をしている。

"The guys who survive best are the ones who write letters and accept visitors," he said. That's why, during the isolation caused by a pandemic, it's important to make time every day to connect with others, whether through a socially distanced chat, telephone call or, at the very least, a thoughtful text message.

(訳) 「一番上手く世界的疫病を生き残る人は、手紙を書いて、訪問者を受け入れる人だ」と彼は言った。その理由は、疫病で引き起こされた孤独の間に、社会的に距離を取った話し合い、電話での話し合い、あるいは少なくとも考え抜いた文字のメッセージを通じて、毎日、他人とつながる時間を取ることが重要であるからだ。

 2021 年 9 月 22 日当時、日本では新型コロナワクチンを二回接種した人は、日本人口の 54.4 パーセントである。また、昨日の東京での感染者数は、253 人であった。一時は 1 日 5000 人を超えることがあったので、ワクチン接種の効果が現れているのではないか、と考えられる。ニュースでは、人々が外に出かけている様子が報道されている。喜ばしい限りである。

 しかし多くの専門家は、今年の冬にまた新型コロナの再流行が起きると、予測している。

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