デイリー・メール (The Daily Mail)

 The Daily Mail (デイリー・メール) はイギリスのタブロイド判 (1971年までは通常版) の新聞であるが、1896年に Alfred Harmsworth によって創刊された。現在の発行部数は200 万部を超えている。イギリスでは社会階層によって購読する新聞がはっきり分かれており、The Times「タイムズ」や The Guardian「ガーディアン」など富裕な上流層を対象とする高級紙に対し、「デイリー・メール」は中下流の読者層をターゲットとしている大衆紙である。

 この「デイリー・メール」の沿革が、2017 年実施の青山学院大学 (教育人間学部) の英語入試問題に出題されている。問題は適切な英文を選択させるもので、本文をしっかり読んでいれば答えられる良問である。

 まずデイリー・メールの創立者 Alfred Harmsworth が、新聞記者の感覚を持っていたことが紹介される。

His energy and vision were backed by an unparalleled news instinct: an ability to see the potential for news event before it broke, an ability to predict the pace of change in the world while others seemed no to notice.

(訳) 彼のエネルギーと直感は、比類のないニュース本能で支援されていた。それはニュースが公表されるまえに、ニュースの可能性を認める能力であり、他の人が気付いていないと思える世界の変化の速度を予言する能力であった。

 彼が先見の明があったことは、最初に発行した新聞に女性のページを作ったことである。当時の新聞は女性読者のことは念頭になかったので、嘲笑を買ったようだ。

Not least among its innovations was that it began its first issue with a woman's page, arousing derision from other journals which regarded female readers as beneath consideration.

(訳) その新聞の改革では特に、最初の新聞で女性用のページを作ったことであるが、女性読者を念頭に置いていない他紙から嘲笑を買った。

 さらに彼は今日のジャーナリズムでは常識となっているが、現地に多くのリポーターを送り込んで取材をさせた。

He sent a powerful team of reporters to cover the Boer War, including Edgar Wallace and George Warrington Steevens.

(訳) ボーア戦争報道のために、エドガー・ウォレスやジョージ・ワリングトン・スティーブンズを含めたレポーターの強力なチームを、彼は現地に派遣した。

 そして Alfred Harmsworth は賞金を提供することによって、飛行機の発達にも貢献したことがある。

Nowhere has the Mail's influence been greater than in the history of airplane industry. It instantly recognized its importance even before the Wright brothers made their first successful powered flight in 1903.

(訳) 飛行機産業の歴史において、デイリー・メールの影響はどこよりも大きかった。1903年にライト兄弟が最初の動力飛行に成功する前から、その新聞はすぐに重要性を認識していた。

 彼が死んだときには世界中から弔文が送られたが、そのことは彼が歴史上の人物になったことを示している。Alfred Harmsworth は爵位を与えられて、Lord Northcliffe となったので、次の英文では Northcliffe と表記されている。

When Northcliffe died in 1922 the flood of tributes from around the world―from the President of the United States to the printers who composed his newspapers, and the readers who bought them―made clear his place in history.

(訳) ノースクリフが1922年に死んだとき、世界中からの弔文は彼の歴史上の位置を明らかにしていた。弔文はアメリカ合衆国の大統領から、彼の新聞を作った印刷工や新聞を買った読者からのものであった。

 この新聞が最近話題になったのは、2016年、イギリスの EU 離脱に関し、反グローバリズムの立場で、毎日のように離脱支持の記事を掲載したことである。この新聞の影響かどうか分からないが、イギリスは EU 離脱を国民投票で決している。悲しいことに、ウィキペディアの英語版は、「デイリー・メール」の情報は信用できないとして、引用禁止にしている。

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