既視感 (Déjà Vu)
2023 年 2 月 1 日の Scientific American という雑誌に、面白い記事を発見した。その記事は、既視感 (Déjà Vu) について論じているが、既視感はほとんどの人が経験したことがあるのではないだろうか。来たことがない場所にも拘わらず、遠い昔に来たことがあるという気持ちがすることがあるが、それは不思議な感情である。
この記事を書いた Stephanie Pappas (freelance science journalist) は、既視感について次のように述べている。
Most people experience this sensation, known as déjà vu, at some point in their lives. It’s a hard feeling to study, though, because it tends to arise spontaneously and be shaken off easily, scientists say. Re-creating it on command in a laboratory is tricky business.
(訳) ほとんどの人は、人生のある時期に、既視感と知られるこの感情を経験している。しかし、科学者たちが言うには、この感覚は恣意的に起こり、容易に振り払い安いので、研究するには困難である。実験室で、その感覚を作り直すことは、やりにくい仕事である。
認知心理学者の Akira Robert O’Connor (Senior Lecturer, University of St Andrews) は、既視感が起こるメカニズムを、科学的に説明しようとしている。
When this happens, another region of the brain then checks this feeling of familiarity against your recall of past experiences. When no actual matches are found, the result is a discomfiting sense of having seen it all before, accompanied by the knowledge that you haven’t.
(訳) この感覚が起きているとき、脳の他の部分が、過去の経験のあなたの回想に照らし合わせて、「よく知っている」(familiarity) というこの感情を点検している。実際にそっくりなものが見つからないときに、結果としては、見たことがないという知識と共に、以前に見たという当惑するような感覚となる。
既視感というフランス語は、フランスの哲学者であり、エスペラント語の熱心な推進者である Émile Boirac (1851-1917) が最初に使った術語である。英語では paramnesia という単語が該当する。
既視感の研究は、この現象が恣意的に起こり、消えやすいので、実験室で再現することが困難なので、かなり難航していたが、認知心理学者の Anne Cleary (Professor of Psychology, Colorado State University) がその全貌の一部をようやく明らかにした。
In a 2009 study, the researchers found that viewing these sneakily similar scenes was more likely to cause feelings of déjà vu than viewing dissimilar scenes—suggesting that perhaps there is some environmental trigger for the brain to call out, “Hey, I recognize that!” even when it’s never seen the scene before.
(訳) 2009 年の研究で、これらのかすかに似ている場面を見る行為は、異なる場面を見るよりも、既視感の感覚を起こしやすいことを、研究者たちは発見した。多分以前にまったく見たことがなくとも、「おや、私はそれを知っている」と叫ぶ、脳に対する周囲の手がかりが存在することを、これは示している。
既視感は若い人に起こりやすく、老人にはあまり起こらないようだ。若い人の脳は興奮しやすく、既視感を抑え込む前に、既視感が起こってしまうからである。
Supporting this random-misfire hypothesis is the fact that young people actually experience more déjà vu than older people. Younger brains are a little more excitable, prone to fire more quickly rather than holding back, O’Connor says.
(訳) この「いい加減な不発という仮説」を支持するものは、若い人が老人よりも実際に多くの既視感を経験しているという事実である。、若い人の脳は、老人の脳より興奮しやすく、抑えるよりも早く始動しがちである、とオコナ―は言う。
逆に老人の場合には、脳の事実確認能力が衰えているので、既視感は起こらないようになっている。
The fact-checker of the brain sits in the frontal cortex, behind the forehead. In older adults, this region may be less likely to put the brakes on a false sense of familiarity.
(訳) 脳の事実確認する部分は、額の後ろの前頭葉にある。年老いた人々には、この領域は、似ているという間違った感覚をあまり抑制しないのかもしれない。
ネットで「既視感」という単語を検索してみると、まだ解明されていない部分が多く、これが発生の原因であるとは、特定できていないようである。多くの学者は、精神的な病気と関連づけている。