英語の早期教育 (Early English Education)

英会話教室 外国の先生と女の子 (イラストボックスより)

英会話教室 外国の先生と女の子 (イラストボックスより)

 

 もう二十年前ころであろうか、小学生から英語を教えていることがトレンドになっている。最近は当たり前になったので、ニュースなどでその現場を見ることはない。私が家内と一緒に時々買い物に行くイオンでも、小学生が外国人の先生から英語を習っているスペースがある。大学で英語教師として働いた経験を持つ私は、その動きに反対することはしない。特に、楽天やユニクロという世間から注目を集めている企業が、会社内では英語だけという風潮では、親としては子供の将来のために、せめて英語くらいは身につけさせてやりたいと思うのは当然であろう。ネットで「楽天と英語」というテーマで検索してみると、
「楽天では、2010年に三木谷浩史社長がグローバル化推進のため英語を公用語とすることを発表しました。これにより、海外事業の拡大や多様な人材の活用を目指しています」という文言が出てきた。

 早期英語教育について言えば、言語は抽象化のプロセスであることを忘れてはいけない。ある物体を表現することは、その事物に名前を与えて抽象化することである。現実から抽象世界へ移行することを意味する。これが物体であれば簡単であるが、自分の思想や思いを言語化することは、かなり高度な抽象能力を必要とする。

 聞くところによると、人間は抽象化の能力が発達するのは、中学生くらいからのようだ。言語はオウムのように繰り返す音声ではなく、自分の思いに注意をこらして、それを抽象化して相手に伝える作業を伴うのである。その抽象化に長けていないと、十分な意思疎通はできないことになる。また抽象化されて発信された言語を理解するには、抽象化の過程を熟知していることが、必要十分条件であろう。だから、ただ英語の音声を聞いているだけでは、英語が上達するはずはなく、この抽象化の過程を英語で繰り返し実施するしかない。もちろん、最初は日本語から始めることは当然である。

 英語早期教育で注意したいことは、まず英語恐怖症を作らないでほしいということである。大学で英語を教えていたころ、「私は英語が苦手です」という学生に時折出くわす。おそらく中学校や高等学校在学中に、英語に関して嫌な思い出があるのであろう。英語も日本語と同じように言語であるから、それに接触している時間が長ければ長いほど、言葉の綾が分かってくる。要は時間をかけるかかけないかの差でしかない。しかし、いったん「苦手意識」が芽生えると、それを取り除くには容易ではなく、「私は英語が苦手です」という学生の前では、ただ沈黙しているしかない。

 英語早期教育の利点は、英語の音には日本語にはないものが存在するという認識である。これは幼児のうちから覚えておいてもよい。またその音を何回も聞いておくことは重要であると思われる。

 "How can I go to the nearest station?" という簡単な英文を丸暗記するのではなく、自分の思いや思想をどのように日本語でも英語でも表現可能かという追求が、真の英語力を育てるということを忘れてはならない。小学生がオウムのように繰り返す英語を聞いて、この小学生の英語力は相当なものという錯覚を持つ大人が増えれば増えるほど、日本の英語教育はますます変な方向に流れていくと思われる。