英語の語彙 (English Vocabulary)

ゲルマン語とロマンス語

 現代英語の語彙の半分は、古英語 (Old English) やスカンディナビア語 (Scandinavian) のようなゲルマン語、あとの半分は、フランス語 (French) やラテン語 (Latin) のようなロマンス語 (Romance language) です。その他に、多くのギリシャ語 (Greek) に由来する科学・技術の語彙、またかなりの数のオランダ語 (Dutch)、イタリア語 (Italian)、スペイン語 (Spanish)、ドイツ語 (German)、アラビア語 (Arabic) からの借用語となっています。

 基本的な概念や事物の名前は、古英語から来ています。主な単語を挙げてみますと、heaven, earth, love, hate, life, death, beginning, end, day, night, month, year, heat, cold, way, path, meadow, stream です。基数 (cardinal number) は古英語から、また “second” を除いてほとんどの序数 (ordinal number) も古英語からです。 “second” はラテン語の “secundus” (following の意味) からフランス語に入ってきた “second” から派生しています。

 古英語から全ての人称代名詞 (personal pronouns) を現代英語は使っていますが、they、their、them はスカンディナビア語から来ています。助動詞 (auxiliary verbs) やほとんどの前置詞 (prepositions)、接続詞 (conjunctions) は、古英語から来ています。すなわち重要な語彙は、ほとんどが古英語から派生していることになります。

 多くの名詞は、古英語から入ってこようとスカンディナビア語から入ってこようと、同じ形です。それらの名詞は、father, mother, brother, man, wife, ground, land, tree, grass, summer, winter, cliff, daleです。

 多くの単音節語の動詞も、古英語から入ってこようとスカンディナビア語から入ってこようと、同じ形です。例えば、bring, come, get, hear, meet, see, set, sit, spin, stand, think などです。

 形容詞も同じで事情で、full, wise, gray, green, white, mine, thine, north, west, over, under などがあります。

 古英語とスカンディナビア語との二重語も存在します。例えば、no and nay, yea and ay, from and fro, rear and raise, less and loose などです。

 古ノース語 (Old North) 、つまりスカンディナビア語を用いる民族との接触は 8 世紀から始まりますが、1150 年までの文献には、スカンディナビア語の単語は 60 語しかありませんでした。例えば、husband, outlaw, knife, take などがその例です。

 スカンディナビア語からの借用語が、文献に多く見出されるのは、13 世紀以降です。名詞では band, birth, bloom, crook, dirt, egg, gait, gap, girth, knife, loan, race, rift, root, score, seat, skill, sky, snare, thrift, and window、形容詞では awkward, flat, happy, ill, loose, rotten, rugged, sly, tight, ugly, weak, and wrong、動詞では call, cast, clasp, clip, crave, die, droop, drown, flit, gape, gasp, glitter, life, rake, rid, scare, scowl, skulk, snub, sprint, thrive, thrust, and want などです。

フランス語からの借用

 英語がフランス語から借用した語彙は、かなり多いことは事実です。president, representative, legislature, congress, constitution, parliament などの語彙は、すべてフランス語からの借用です。duke, marquis, viscount, baron はフランス語からの借用ですが、king, queen, lord, lady, earl, knight は古英語の語彙となります。city, village, court, palace, manor, mansion, residence, domicile は、フランス語からの借用ですが、town, borough, hall, house, bower, room, home は古英語の語彙です。

 古英語とフランス語からの借用語の同意語を比較してみますと、古英語はフランス語より人間的で具体的です。フランス語からの借用語は、知的で抽象的であると言えます。freedom (Old English) と liberty (French), friendship と amity, hatred と enmity, love と affection, likelihood と probability, truth と veracity, lying と mendacity という組み合わせを考えてみれば、そのことが明白になると思います。

 フランス料理が素晴らしいという理由で、boil, broil, fry, grill, roast, souse, toast などの言葉が、英語に入ってきています。breakfast は古英語からですが、dinner や supper はフランス語から入ってきました。hunt は古英語からですが、chase, quarry, scent, track などはフランス語から入ってきました。

 職人の名前は、古英語起源の語彙が多いと言えます。例えば、baker, builder, fisherman, hedger, miller, shepherd, shoemaker などがそうです。しかし、熟練工の名前は、フランス語起源が多い。例えば、carpenter, draper, haberdasher, joiner (英語では carpenter), mason, painter, plumber, tailor などがそうです。

ギリシャ語からの借用

 科学技術の分野では、多くの語彙は、フランス語を通って古典ギリシャ語から、あるいは直接古典ギリシャ語から導入されました。研究開発の先駆者たちは、ギリシャ語を科学技術用語の無尽蔵の源泉と、考えているようです。

 far away や distant の意味を表すギリシャ語の副詞 tele を、合成語の photography の前に付けて、特別なレンズで遠くの物体を移すという意味の telephotography という語彙を作りました。小さいという意味のギリシャ語の接頭辞 micro を、photography の真ん中に挿入して、バクテリアやウィルスの撮影という意味の photomicrography を作っています。

 多くのギリシャ語から作られた合成語や派生語は、ラテン語から作られた同じような意味をあらわす語彙があります。metamorphosis (ギリシャ語)と transformation (ラテン語) は、一見同じような意味を表すと思えますが、metamorphosis はより技術的な言葉で、transformation より限定された意味しか持ちません。

 神話では、metamorphosis は魔法のような姿の変化を表しますが、自然界では、おたまじゃくしがカエルになったり、毛虫が蝶になったりする変化しか表現できませんが、transformation は全ての変化を表すことができます。

イタリア語の影響

 英語は、イタリア語から音楽の語彙を受け入れています。声、音部、演奏者、楽器、作曲等に関する語彙は、すべてイタリア語から入っています。allegro, andante, cantabile, crescendo, diminuendo, legato, maestoso, obbligato, pizzicato, staccato, vibrato のような語彙は、比喩的にも用いられています。

 建築用語に関しては、英語はイタリア語の影響を多大に受けており、corridor, cupola, grotto, pedestal, pergola, piazza, pilaster, rotunda などがあります。

 文学では、イタリア語から来た語彙は burlesque, canto, extravaganza, stanza などがあります。

スペイン語の影響

 スペイン語から、英語は armada, cannibal, cigar, galleon, guerrilla, matador, mosquito, quadroon, tornado, vanilla のような語彙を取り入れています。これらの語彙のうち、16 世紀までさかのぼるものまであります。エリザベス朝時代の海賊が、海上でスペイン人の船を襲ったからです。

 動物や植物の名前の多くが、スペイン語を通して英語に入ってきました。potato は、西インド諸島に住んでいたタイノー族の言葉でありましたが、スペイン語を通して英語に入ってきました。また tomato は、メキシコ南部に住んでいた先住民の言語が、スペイン語を通して英語に入ってきました。

 以上、英語の語彙について説明してきましたが、大学受験生や英語に興味にある方のご参考になれば幸いです。

(Encyclopaedia Britannica Online を参考にしました)

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