インターネットと犯罪 (Internet and Crime)

 

 現代人の多くは、インターネットの恩恵に浴していると思われる。私自身も、臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺老師の「般若心経講義」を聞いたり、英語のリスニングの訓練のために、英語のニュースを聞いている。ほんの前までには想像もできないことであった。

 特に横田南嶺老師の法話には、感銘を受けることが多く、ほとんど毎日感謝しながら聞いている。これまで難解で分からなかった「般若心経」が、老師の懇切丁寧な説明を聞いて、目から鱗が落ちた思いであった。花園大学の学生をうらやましく思ったものである。

 しかしインターネットは悪い面も持っている。2023 年の 1 月は、複数人による強盗が、首都圏で数件起こっているようで、それはインターネットを介して、犯罪に加担する人を探しているようだ。詳しいことは、警察の捜査中なので、一般人には分からないが、インターネットが犯罪に利用されるていることは明らかである。

 これに関連することであるが、The Hedghog Review-Critical Reflections on Contemporary Culture (Fall 2022) という英文雑誌を読んでいたら、"On Hope and Holy Fools-There is nothing very sexy about hope" という記事が目についた。内容は高度なもので、面白い意見と思ったが、その中の記述で “incels” (インセル) という単語が気になった。この単語の意味は、BBC によると、次のような意味らしい。文中の Davison という人物は、Jake Davison で、2021 年イギリスのプリモスで 5 人の大量殺人をおこした犯人である。

In the online videos Davison said he was socially isolated, struggled to meet women and made references to "incels" - the misogynistic online groups of "involuntary celibate" men, who blame women for their sexual failings and who have been linked to a number of violent acts around the world.

(訳) ネットに投稿した映像の中で、デービソンは、社会的に孤立して、女性と出会うことに苦労していると述べ、「不本意の独身主義者」(インセル) に言及していた。インセルとは、「不本意な独身主義者」の男性たちの女性蔑視のオンライン・グループであり、彼らは自分たちが女性と性的関係が結べないのは女性のせいにし、世界中の多くの暴力と関係している。

 インセルとは、恋愛や性のパートナーが欲しいが叶わず、その原因は女の側にあると考える、インターネット・コミュニティに参加する女性蔑視主義者のことである。女性は一部の男性にしか興味はなく、その他大勢の男性は眼中にないと考える男性たちは、その反動として女性蔑視に陥ることは想定できる。しかしそれで殺人を犯していい訳はない。

" On Hope and Holy Fools-There is nothing very sexy about hope" という記事を書いた Tara Isabella Burton は、映画「マトリックス」の主人公が、真実を見るために、赤い錠剤を飲むことを踏まえて、"incel" の男性は black pill を飲んで、悲痛な人生観を心に植え付けると論じている。「自分が女性に相手にされないのは、女性が悪いからだ」という発想である。

Originating in the online communities of “incels” (the involuntary celibate) around 2016, the “black pill” first referred to the notion that men’s social identities and sexual desirability were fixed.

(訳) 2016 年ころのインセル (不本意な独身主義者) のオンライン・コミュニティに始まって、「黒い錠剤」という言葉が初めて、男性の社会的個性や性的欲求が固定的であるという概念に言及した。

 Tara Isabella Burton は黒い錠剤を飲むことは、人間存在の悲観的な面を受け入れることだと考えている。

Taking the black pill meant accepting the inherent bleak brutality of human existence, in which love could only ever be reducible to a power struggle among competing animals in a hierarchy rendering mutuality impossible.

(訳) 黒い錠剤を飲むことは、人間存在の寒々とした残忍性を受け入れることを意味していた。そこでは愛は共感を不可能にする階級制度の中で、争う動物間の権力闘争にしか還元され得ないものとなる。

 インターネットは、現代人に多くの恩恵を与えてくれるが、使用方法を間違えると、犯罪への道に繋がっていく。便利なものには、邪悪なものが付きまとうのかもしれない。私にとって、インターネットは数多くの恩恵を与えてくれるが、犯罪に巻き込まれる人もいることは、心しておかなければならない。

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