意義ある人生とは何か?

2021 年の The Wall Street Journal に興味深いエッセイがあったので、ここで紹介したい。

まず驚いたことは、有名な日本人である近藤麻理恵さんのことに触れていることだ。彼女は片付けのアドバイスで一躍有名になった方であるが、今はアメリカのカリフォルニアに住んでいる。

The tidying guru Marie Kondo became famous by telling people to throw away possessions that don’t “spark joy,” and many would see such purging as excellent life advice in general. But this theory is incomplete. Under the right circumstances and in the right doses, physical pain and emotional pain, difficulty and failure and loss, are exactly what we are looking for.

(訳) 片付けの権威者である近藤麻理恵さんは、人々に「喜びを発しない」所有物は捨てなさいと助言することで有名になり、多くの人は概して素晴らしい人生の助言として、そのような浄化を理解するかもしれない。しかしこの理論は完全ではない。適切な状況で、また適切な分量では、肉体的・精神的苦痛、困難や失敗や喪失は、まさに私たちが期待しているものである。

確かに人生は苦しみを避け、快楽を求めるだけでは、意義ある生活は送れない。何が必要かと、エッセイの筆者 Paul Bloom 氏は考える。人は自ら苦しみを求める傾向があることは、周知の事実であるが、それを彼は次のような理由からだとする。

The right kind of negative experience can set the stage for greater pleasure later on; it’s a cost we pay for a greater future reward. Pain can distract us from our anxieties and help us transcend the self.

(訳) 適度な否定的経験は、後から来るさらに大きな喜びのお膳立てをすることもある。それは私たちが大きな将来の報酬に払う代償である。苦痛は私たちを不安から目を逸らさせるし、自己を超克する助けとなる。

筆者 Paul Bloom 氏は、精神科医のビクトール・フランクルの理論を持ち出してくる。フランクルはアウシュビッツ経験を生き残った人であるが、収容所に入れられた仲間たちの中に、生き延びる人と自殺や生きる希望をすぐになくす人の違いについて考察している。

Ever the scholar, Frankl studied his fellow prisoners, wondering about what distinguishes those who maintain a positive attitude from those who cannot bear it, losing all motivation and often killing themselves. He concluded that the answer is meaning. Those who had the best chance of survival were those whose lives had broader purpose, who had some goal or project or relationship, some reason to live.

(訳) いつも学者であったフランクルは、仲間の囚人たちを研究して、積極的な態度を取れずに、すべての生きる希望を失い自殺する人と、積極的な態度を保持している人の違いは何かと考えた。その答えは意義であると、彼は結論づけた。生き残る最大の可能性を持っている人は、生活に大きな目標を持っており、目的あるいは計画あるいは人間関係、そして生きる理由を持っている人であった。

このエッセイの最後にオルダス・ハックスリー (Aldous Huxley) の 『すばらしい新世界』Brave New World (1932年) の登場人物の言葉を提出する。そこには幸せな生活は、快楽や安楽だけではないことが明確に示されている。

And John responds, “But I don’t want comfort. I want God, I want poetry, I want real danger, I want freedom, I want goodness. I want sin.” There is no better summary of human nature.

(訳) そしてジョンは答える。「私は慰安を求めていない。私は神や詩、また現実の危険性が欲しいのだ。私は自由や善良さが欲しいのだ」これほど人間性を要約した言葉はない。

ジョンは『すばらしい新世界』の中では、高貴な野人 (Noble Savage) と形容され、シェイクスピアの作品に大きな影響を受けているが、このような人物の叫びは人の心を打つものがある。

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