ホッキョクグマ (The Polar Bear)
2021 年実施の獨協大学の英語入試問題に、ホッキョクグマのことが論じられている。
この文章を取り上げようと思ったのは、最近の日本では、ツキノワグマが人を襲う事件が相次いでいるからである。そしてクマを駆除すると、必ず苦情を言ってくる人がいるそうだ。何十回と当該の市役所等に電話をかけて、業務を停滞させているようだ。クマとの共存が理想であるが、人に被害が及ぶとなれば、駆除も仕方ないことかと思える。苦情を電話で語る人も、親や子供がクマの被害にあったらどうするのであろうか。
ホッキョクグマの身体能力
この入試問題の英文で、注目すべきは、ホッキョクグマの身体能力である。人がホッキョクグマに出会ったときには、なすすべもなく殺されるであろう。身体強健な人が、銃かナイフを持っていれば、駆除も可能であろうが、一般人が素手で立ち向かっても、人間に勝ち目はない。
They are incredibly strong and fast able to run up to 40 kilometers per hour. The polar bear’s paws act as snowshoes, and this gives them both agility and speed on the soft snow. Their large paws also allow them to swim very well. Some have been observed swimming up to 10 kph and even continuously for up to nine days. They are very large predators, weighing anywhere from 350-700 kilograms. The males are often much larger than the females. Their diet consists almost exclusively of seal meat, and they need to kill seals often to survive. They can smell their prey nearly 1.6 kilometers away, even if it is hiding under a meter of snow.
(訳) 彼らは信じられないほど強く、時速 40 キロメートルまで走ることができる。ホッキョクグマの前足は、スノーシューの役割を果たし、柔らかい雪上では、敏捷性とスピードの両方を与える。また、大きな前足は、ホッキョクグマを上手く泳げるようにしている。時速 10 キロまでの速さで泳ぎ、最大 9 日間連続して泳ぐホッキョクグマも観察される。彼らは非常に巨大な食肉動物で、体重は 350〜700 キログラムである。多くの場合、オスはメスよりもはるかに大きい。彼らの食事は、ほぼアザラシの肉のみで構成されており、生き残るためにはアザラシを頻繁に殺す必要がある。ホッキョクグマは、1.6 キロ近く離れた場所でも、1 メートルの雪の下に隠れていても、獲物の匂いを嗅ぐことができる。
ホッキョクグマの南下と人間との遭遇
ホッキョクグマの個体数は減少しており、それは気候変動のためである。上昇する気温は氷を薄くして、獲物を捕獲することが困難になる。ホッキョクグマが南下すると、人間と遭遇し、現在、日本人がツキノワグマやヒグマと遭遇している事象と同じようなことが起こる。
The decrease has been attributed to climate change. Increasing temperatures means that there is not only less ice, but it is also much thinner, especially in spring. This makes their prey harder to find. Polar bears have been increasingly moving south to find more food, and it seems unlikely that their decline in numbers can be halted in the near future. Their retreat to the south increases the number of interactions with humans, posing danger to both species.
(訳) 個体数の減少は、気候変動のためである。気温が上昇すると、氷が少なくなるだけでなく、特に春には氷がはるかに薄くなる。 これにより、獲物を見つけるのが難しくなる。 ホッキョクグマは餌を求めて南下する傾向が強まっており、近い将来、ホッキョクグマの減少に、歯止めがかかる可能性は低いと思われる。 南に退却すると、人間との遭遇が増え、人間とホッキョクグマの両方に危険が及ぶ。
気候変動は地球上で様々な現象を起こしているが、最近では洪水や大規模な山火事などが頻繁に起こっている。さらに動物たちにも影響を与え、彼らの生存はますます困難になる。また減少する個体数は、地球環境のバランスを崩壊させることになる。
締約国会議 (Conference of the Parties―略称 COP)で、「気候変動枠組条約」 (United Nations Framework Convention on Climate Change) の加盟国が、地球温暖化に対する具体的政策を議論することが重要になってくる。
パリ協定
地球環境については、パリ協定が有名であるが、もう一度ここで思い出してみるのも無駄ではない。次の文章は Wikipedia の英語版から採ったものである。
The Paris Agreement's long-term temperature goal is to keep the rise in mean global temperature to well below 2 °C above pre-industrial levels, and preferably limit the increase to 1.5 °C, recognizing that this would substantially reduce the effects of climate change. Emissions should be reduced as soon as possible and reach net zero by the middle of the 21st century. To stay below 1.5 °C of global warming, emissions need to be cut by roughly 50% by 2030.
(訳) パリ協定の長期気温目標は、世界の平均気温の上昇を、産業革命前の水準から 2° Cよりはるかに低く抑え、できれば 1.5° Cに抑えることである。排出量をできるだけ早く削減し、21 世紀半ばまでに最終的にゼロにする必要がある。地球温暖化を 1.5° C未満に抑えるには、2030 年までに排出量を約 50% 削減する必要がある。
ロシアのウクライナ侵略、ハマスとイスラエルの武力衝突のために、最近では地球環境の問題がなおざりにされているような気がする。なお Wikipedia の英文中にある net zero とは、大気中の温室効果ガス(GHG)排出量が除去量と差し引きゼロになる状態を言う。かなり厳しい条件である。
