日本の人口問題 (The Population Problem in Japan)

日本人の人口推移 (図表は総務省ホームページより)

 2023 年実施の慶應義塾大学医学部の英語入試問題には、日本の人口問題に関する面白い指摘を取り上げている英文が使われている。

日本の人口構成で65歳 以上の人が、2019 年には 28.4 % を占めているという指摘の後に、あまり注目されていない日本における人口問題にも触れている。

At the same time, there is another less commonly noticed area in which Japan may also lead the world: its "solo" population of people living alone.

(訳)それと同時に、日本が世界をリードしているあまり注目されていない領域、すなわち一人暮らしの人口問題がある。

2040 年には、一人暮らしの人口が 39 % になり、両親と子供という核家族は 23 % になり、圧倒的に一人暮らしの人口が増加すると、人口予測では指摘されている。

さらにこの英文で興味深いことは、現代の人口状況が江戸時代の人口状況に類似していると論じているところである。多くの人がこの視点に気付くことはないのではないだろうか。

In fact, it was not until the end of the nineteenth century that Japan was in a situation where almost everyone got married. Before that, it was not uncommon for people to go through life without getting married. In that sense, there are some surprising points of similarity between the Edo period and contemporary society.

(訳) 実際のところ、日本でほぼすべての人が結婚する状況になったのは、19世紀末になってからである。それ以前は、結婚せずに生涯を過ごす人も珍しくなかった。その意味では、江戸時代と現代社会との間に驚くべき共通点がいくつか存在している。

江戸時代には、大勢の農民や商人たちが、江戸を目指してやってきて、男性の数は女性の数の 2 倍になったそうである。そこで生涯を独身で過ごす男性が増えたようである。

だから暇を持て余した男性は、子孫を作らずに、今日多くの人が楽しんでいる漫画やメイド・カフェなどの文化を残したと言える。問題文では次のような英文となっている。

Many men in Edo remained unmarried throughout their lives and did not leave any descendant behind. Instead, their legacy was the various forms of popular culture that are enjoyed around the world today.

(訳) 江戸時代には、多くの男性が一生独身であり、子孫を残さなかった。彼らの遺産は、代わりに今日世界中で楽しまれているさまざまな形の大衆文化であった。

現在の人口状況が江戸時代にそれと類似しているという指摘も驚いたが、今や世界的に人気となった漫画やメイド・カフェが江戸時代の独身男性の遺産であるという論点に目から鱗が落ちるようなショックを受けた。この文章の内容は、多くの方に理解してもらいたいものだ。

このような英文を入試問題に取り上げるとは、慶応義塾大学の英語教員には、洒落た感覚をお持ちの先生がいるようだ。

\ 最新情報をチェック /