映像が子供に与える影響 (TV affects Children's Development)

 2023 年 10 月 28 日の毎日新聞に、テレビや DVD などの映像に長くさらされた 1 歳児は、2 歳児になったとき様々な能力が遅れるという記事があった。

 最近では幼児にスマホを渡して遊ばせる親がいるが、この記事を読んだら恐ろしくなるかもしれない。

 1 歳の子供がテレビや DVD の映像を眺める時間が長いほど、2 歳になったときにコミュニケーションや問題解決などの発達が遅れる、とこの記事は最初に論じている。

The study, published last month in the online edition of JAMA Pediatrics, a journal of the American Medical Association, found greater screen time for children aged 1 was associated with a higher risk of developmental delay at age 2 in the communication, problem-solving, and personal and social skills domains.

(訳) 先月、米国医師会の学術誌「JAMA Pediatrics」のオンライン版に掲載された研究によると、1 歳の子どもが映像を見つめる時間が長いほど、コミュニケーション、問題解決、個人的・社会的スキルの領域において、2 歳での発達遅延のリスクが高いことがわかった。 (訳注―文中の pediatrics は「小児科」の意味である)

 反対に、兄弟のいる子供や親が読み聞かせをする子供は、コミュニケーション能力が高いという傾向がある。

Children with higher scores in communication had shorter screen exposure time. Higher developmental performance was associated with the presence of an older sibling and frequent reading to the child, among others, according to the study.

(訳) コミュニケーションのスコアが高い子供は、画面への露出時間が短かった。この研究によると、発達能力の高さは、年上の兄弟の存在や子供への頻繁な読み聞かせなどと関連していた。

 コミュニケーション能力の低い子供の背後には、社会から孤立した親の状態が見えてくる。

Another group member, Hidetoshi Mezawa, a doctor at the National Center for Child Health and Development, said behind increased screen time are parents who are isolated from society.

(訳) もう一人のメンバーで、国立成育医療研究センターの医師である目澤秀俊氏は、スクリーンタイムの増加の背景には、社会から孤立した親がいると指摘する。 (訳注―目澤秀俊氏は 2024 年現在、国立研究開発法人国立成育医療研究センター所属)

 親のコミュニケーション能力が、子供に大きな影響を与えることは理解できるが、中にはそのような環境でも優秀に育つ子供もいると思われる。テレビや DVD の影響よりも、子どもの周囲に常に話しかける人がいれば、その子は順調に育つと考えられる。

 この研究に関して、さらに知りたい方は、国立大学法人東北大学、国立大学法人浜松医科大学の教員が発表した次の論文が役に立つと思われる。次のサイトを参照のこと。https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/88ca5bfe591428ee3d6dfdb5caf77c49.pdf (2023 年 8 月 22 日に掲載)

 東北大学や浜松医科大学の研究によると、以下のようなことが判明した。

本研究ではスクリーンタイムは子どものすべての発達領域に関連するのではなく、コミュニケーション領域および問題解決領域の発達の遅れと特異的に関連し、その関連は子どもの成長とともに継続することが明らかになりました。

 子どもがスマホや DVD にさらされた時間が長いほど、彼らのコミュニケーション能力や問題解決能力に遅れが、特異的に関連しているという興味深い結論が得られたようだ。これからはその原因を探り、予防的措置も考えていくことが必要となろう

 またこれほどスマホが普及した時代に生まれた子供は、将来どのようになるかは予見が困難である。彼らの行動や思考を注視する必要がある。だが私としては彼ら子供たちの潜在能力を信じることにしたい。

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